ワーキングホリデーを計画中の方、特に社会人の皆さま、住民税のシステムは複雑で、理解がしにくいため、手続きを後回しにしてしまっていませんか。
この記事では、そんなワーホリ中の住民税について説明します。
住民税の基本的な仕組みから、支払いを免除されるための具体的な手続き、そして渡航期間別の最適な選択肢まで解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
住民税とは
住民税は、私たちが住んでいる市区町村や都道府県に対して納める税金で、地域の行政サービス支える大切な財源となっています。
住民税は、前年の所得に対して課税されるのが特徴です。
例えば、2025年度の住民税は、2024年1月1日から12月31日までの所得に基づいて計算されます。
この「前年の所得に対して課税される」という点が、ワーホリと住民税の関係性を複雑にする原因の一つとなっています。
住民税の計算方法と納付のタイミング
前年の所得に応じて計算される「所得割」と、均等に課される「均等割」の合計額が年間の住民税額となります。
具体的な計算式は複雑ですが、基本的には所得が高ければ高いほど住民税も高くなると理解しておきましょう。
住民税の納付タイミングは、大きく分けて2つあります。一つは会社員の方の場合で、毎月の給与から天引きされる「特別徴収」です。
これは会社が従業員の住民税を代わりに納めてくれるため、特に意識することなく支払いが行われています。
もう一つは、個人事業主や退職された方の場合で、自分で納付する「普通徴収」です。
これは、自宅に送られてくる納税通知書に従って、金融機関やコンビニエンスストアなどで支払いを行います。
ワーホリのために会社を退職する場合、この普通徴収に切り替わる可能性が高いので、支払い忘れには十分注意が必要です。
会社を辞めた場合の住民税の支払いについて
ワーキングホリデーに行くために会社を退職する方は多いでしょう。会社員だった場合、住民税は毎月の給与から天引き(特別徴収)されていましたが、退職するとこの仕組みがなくなります。
そのため、退職後の住民税の支払い方法が変わることを理解しておく必要があります。
退職後の住民税の支払い方法は退職時期によって異なります。
例えば、1月1日から5月31日までに退職した場合、その年の5月までの残りの住民税は、最後の給与や退職金から一括で天引きされるのが一般的です。
もし退職金などから引ききれない場合は、後日、自宅に納税通知書が送られてきて、自分で納付(普通徴収)することになります。
一方、6月1日から12月31日までに退職した場合は、退職後の住民税は原則として普通徴収に切り替わります。
これは、残りの住民税を自分で年4回に分けて納める形になります。退職時に会社から住民税に関する案内があるはずなので、必ず確認し、不明な点があれば担当部署に問い合わせましょう。
ワーホリ期間中の住民税は「免除」になる?
ワーキングホリデーを考えている多くの方が気になるのが、「ワーホリに行ったら住民税は免除されるのか?」という点です。
結論から言うと、「ワーホリに行けば自動的に免除される」わけではありません。
「1月1日時点の住所」が重要。住民税の課税ルール
日本の住民税は、毎年1月1日時点で日本国内に住民票がある人に対して課税されるというルールがあります。
たとえ海外に住んでいても、1月1日時点で住民票が日本に残っていれば、その年の住民税の支払い義務が発生します。
例えば、2025年のワーホリを計画していて、2025年1月1日の時点でまだ日本に住民票がある場合、たとえその直後に渡航したとしても、2025年度の住民税(2024年の所得に基づく)は課税対象となります。
このルールを知らずにワーホリに出発してしまうと、海外にいる間に納税通知書が届き、思わぬ出費に困惑することになりかねません。
ワーホリ中の住民税について
ワーキングホリデー中の住民税については、渡航期間によって取るべき行動が変わってきます。
【1年以上海外に行く場合】 ①「海外転出届」を出し、住民税の支払い義務をなくす 【1年未満の場合】 ②「海外転出届」を出さず、住民税の支払い義務を保持する |
【選択肢①】「海外転出届」を出し、住民税の支払い義務をなくす
ワーキングホリデーで1年以上海外へ渡航する場合に特に有効なのが、「海外転出届」を提出し、住民税の支払い義務をなくす方法です。
「海外転出届」とは
「海外転出届」とは、日本の住所から海外へ転居することを役所に届け出るための書類です。
これは、海外へ1年以上滞在する予定がある場合に提出が推奨されています。
この届出を提出すると、法的に「非居住者」として扱われることになります。
海外転出届のメリット:税金・保険料の負担軽減
最大のメリットは、やはり税金や社会保険料の負担を軽減できる点です。
海外転出届を提出し非居住者となることで、原則として翌年度以降の住民税は課税されなくなります。
これは、ワーホリ中の経済的な負担を大幅に減らすことにつながります。
海外転出届のデメリット:行政サービスや資産運用
一方で、海外転出届を提出することにはいくつかのデメリットも存在します。
まず、日本に住民票がなくなるため、住民票が必要な行政サービス(例えば、印鑑登録や運転免許証の更新、パスポートの申請など)が受けられなくなります。
また、日本の銀行口座の開設や一部の金融商品の利用が制限されるなど、資産運用に影響が出る可能性もあります。
「海外転出届」の提出
海外転出届の提出は、自分の住民票がある市区町村の役所で行います。
原則として、出国予定日の14日前から出国日までに手続きを済ませる必要があります。
必要な持ち物は、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)、印鑑(持っていれば)、国民健康保険証(加入している場合)などです。
帰国時にも忘れずに。「転入届」の手続き
ワーホリを終えて日本に帰国したら、忘れずに行うべき手続きが「転入届」の提出です。
転入届は、日本に再び住所を定めたことを市区町村に届け出るものです。
これにより、再び住民票が作成され、住民税の課税対象となるとともに、国民健康保険や国民年金にも再加入することになります。
転入届は、日本に帰国し、住み始めた日から14日以内に、新しい住所地の市区町村役場に提出する必要があります。
海外転出届を出しても昨年の住民税は払う義務がある
「海外転出届を出せば住民税が免除される」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは一部正解ですが、全てではありません。
重要なのは、海外転出届を提出したとしても、その年の1月1日時点で日本に住民票があり、かつ前年に所得があった場合、その前年の所得に対する住民税の支払い義務は発生するということです。
海外転出届は、翌年度以降の住民税の課税を止めるための手続きだと理解しておきましょう。
【選択肢②】「海外転出届」を出さず、住民税の支払い義務を保持する
ワーキングホリデーの期間が1年未満の場合や、日本の住民票を残しておきたい理由がある場合は、海外転出届を提出せずに住民税の支払い義務を保持するという選択肢もあります。
この場合、日本に住民票がある状態が続くため、住民税の支払い義務も継続します。
住民税の支払いタイミングと支払い方法をしっかり確認することが重要
海外転出届を出さずにワーホリへ行く場合、最も重要なのが住民税の支払いタイミングと支払い方法を事前にしっかりと確認しておくことです。
会社を退職してワーホリへ行く場合、住民税の納付は特別徴収から普通徴収に切り替わる可能性が高いです。
普通徴収の場合、年4回に分けて送られてくる納税通知書に従って、自分で金融機関やコンビニエンスストアなどで支払いを行う必要があります。
海外滞在中に納税通知書が届いても、ご自身で支払うことが難しい場合もあります。そのため、出国前に一括で支払う(6月の場合)、事前に家族に代理での支払いをお願いする、インターネットバンキングなどを利用して海外からでも支払いができるように準備しておくなどの対策をしておきましょう。

私は6月末に出発なので、6月中に今年度分を一括で払いました。
支払いには楽天Payを用いました。
ワーホリ住民税以外にも。渡航前に確認すべき公的手続き
ワーホリ出発前に確認すべき公的手続きは住民税だけではありません。国民年金や国民健康保険といった社会保険も、海外渡航によって影響を受ける可能性があります。
国民年金について
国民年金は、国内に住む20歳から60歳未満のすべての方に加入が義務付けられている制度です。
ワーキングホリデーなどで海外へ転出届を提出し、日本に住民票がない状態になると、この国民年金の強制加入義務はなくなります。
一方で、海外転出届を出さずに渡航する場合は、引き続き国民年金の支払い義務が発生します。この場合、任意で保険料の免除申請や納付猶予の手続きを市区町村の役所で行うことが可能です。もし手続きをしないままだと、海外にいても国民年金保険料を支払う必要があります。
国民健康保険について
国民健康保険も、国民年金と同様に、日本国内に住所がある人が加入する公的医療保険です。海外転出届を提出して非居住者となると、国民健康保険の資格は喪失します。
一方で、海外転出届を出していない場合は支払う義務があります。
まとめ
1年以上海外に滞在する予定なら、海外転出届を提出することで、翌年度以降の住民税の支払いを免除される可能性が高まります。
ただし、出国する年の住民税は発生する可能性があることを忘れてはいけません。
1年未満の滞在であれば、海外転出届を出さずに住民票を残す選択肢もありますが、その場合は住民税の支払い義務が継続するため、納税通知書の確認や支払い方法の準備が重要です。

いずれにせよ、手続きや支払い方法の検討など、
準備しなければならないことがありますので、早めに情報収集をしましょう。
ワーホリ中の住民税に関するよくある質問
- Qワーホリ出発直前に海外転出届を出しても住民税は免除されますか?
- A
出発直前に海外転出届を出した場合でも、その年の1月1日時点で日本に住民票があれば、前年の所得に対する住民税は課税されます。
海外転出届は翌年度以降の住民税を免除するための手続きです。
- Q海外転出届を出さずにワーホリに行くと、住民税以外にどんな影響がありますか?
- A
住民票を残したままワーホリに行くと、住民税の支払い義務が継続するほか、国民健康保険や国民年金の加入義務も継続します。
これにより、海外滞在中も保険料や年金保険料を支払う必要が生じます。
- Qワーホリ中に日本に一時帰国した場合、住民税の扱いは変わりますか?
- A
一時帰国の場合、住民票を戻さなければ住民税の扱いは変わりません。
しかし、もし一時帰国中に住民票を再度日本に戻してしまうと、その年の1月1日時点で住民票が日本にあれば、住民税の課税対象となる可能性があります。
- Q住民税の支払い通知がワーホリ中に届いた場合、どう対応すればいいですか?
- A
海外転出届を出さずにワーホリに行き、納税通知書が届いた場合は、日本にいる家族に代理で支払いを依頼するか、インターネットバンキングなどで海外から支払いができるように準備が必要です。
期日までに支払わないと延滞金が発生します。
- Qワーホリの期間が短い場合でも、海外転出届は出した方が良いですか?
- A
ワーホリ期間が1年未満の場合、海外転出届を出すかどうかは任意です。
提出すると住民税や国民健康保険料の負担は減りますが、住民票がなくなることによる行政サービス利用の制限などのデメリットも考慮し、総合的に判断することをおすすめします。